刑事事件における暴行と傷害―弁護士など法律家はどう考えそうか

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傷害の意味

まずは以下の判例を紹介します。
【最判平成24年1月30日刑集66巻1号36頁】

事案の概要

被告人はフルニトラゼパムを含む睡眠薬を混ぜたお菓子をAに食べさせて、Aに約6時間の意識障害および筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせました。さらに、後日Aの飲みかけのジュース缶内に上記の睡眠薬と麻酔薬を入れて、Aに約2時間にわたる意識障害および筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせました。これらの行為が「傷害」にあたるかどうかが問題となりました。

決定要旨

被害者の健康状態を不良に変更し、その生活機能の障害を惹起したものであるから、いずれの事件についても傷害罪が成立すると解するのが相当である。

決定要旨で述べられているように、薬を飲ませて意識障害等にさせる行為は「傷害」にあたるとされました。したがって、人を殴る蹴るなどの有形力の行使に限らず、無形力の行使であっても障害の結果さえあれば、傷害罪になります。暴行罪との区別は、生活機能の障害の有無です。もっとも、暴行罪の場合は有形力の行使が必要なので、無形力の行使をして傷害に至らなかった場合には傷害罪も暴行罪も成立しない点には留意してください。なお、本件は睡眠薬等の薬剤による昏睡させる行為が傷害罪にあたるとすれば、昏睡強盗罪はすべて強盗致傷罪にあたり罪刑法定主義に違反するのではないかというやや難しい論点も含んでいます。今後は、強盗致傷罪のいう「傷害」と傷害罪における「傷害」は、それぞれ区別された概念として考える必要があるのだと思われます。

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